
なぜDSDで録音するのか?-「いい録音」とは時空を飛び越えるようなスリリングな経験を提供してくれます。録音で重要なことは、1:「そこ」でいい音が出ていること、2:マイクの位置が正しいかを確認すること。違いが判る人にとっては、これは何ものに変えがたい重要なことで、たまたま「そこ」に居合わせた人は、証人として「そこ」を体験できています。例えば「そこ」は、70年代のニューヨークなのか、2010年の東京なのか?個人の社会背景や経験に基づくものなのでその違いはよく判らないという人が多いのも事実ですが、ワインでもギターでも価値が判らない人に高いものをすすめるつもりはありません。違いが判る人にとっては、こんなに素晴らしいレコーダーがあることを知ると、再現するための録音をするならDSDということになります。インプットとアウトプットの音が、同じであることが理想で、DSDは、(他のフォーマットと比較してはるかに手軽に)それを可能にしたフォーマットなのです。

ATAK015 for mariaという僕にとって初めてのピアノ・ソロのアルバムをMR-2000Sでレコーディングしてから、DSDは僕にとって欠かせないテクノロジーになった。
音楽に関わる様々なテクノロジーに触れてきたけど、現在の技術的なカッティング・エッジはここにある。
音の解像度が圧倒的に高く、この技術の出現によって音楽においてはバーチャル・テクノロジーという言葉は完全に死語になった。
限りなく現実に近い、音の中に入って行ける感覚がここにはある。
MR-2のように個人が所有可能なツールが出てきたことによって、この事実はより広く知られることになるだろうし、それを願っている。

自然界に存在する音の中で、最も繊細で、かつ最もダイナミック・レンジが広い音は自然音だと思う。その自然音の美しさを捕らえようとした時に、最大の威力を発揮するのがDSDオーディオだ。静寂な森の空気感、生き物達の気配や息使い、また波打ち際の水が砂にしみ込み弾ける泡の音。そういった極めて繊細 な音のディテールを、DSDはずば抜けた解像度で表現してくれる。今までのデジタル・オーディオではあり得なかった別次元の音の世界。それはまさに、DSDがデジタル・オーディオの究極の形であるということを明確に証明している瞬間だと思う。

MRシリーズは発売当初から使っています。ライブでの2ミックスではMR-1、マイク録りの場合はMR-1000、MR-2000S はスタジオで5.6MHzでの録音に使用しています。あるときライブで、ミキサー卓からの2ミックスをMR-1で2.8MHzで録って441kHzに変換してCDRでミュージシャンに渡したら、「自分たちがスタジオで録ってミックスしたものより良かった」と言われたことがあります。音楽の臨場感はライブの演奏にかなうものはありませんが、それを2ミックスでも今の最高の状態で記録できるのは最大のメリットです。またスタジオ録音のマスターもほぼDSDで録っているのも、アナログを除いてDSDが今最高のフォーマットだからです。
身近なところでも、今よく聞かれている音楽はmp3に変換されていることがほとんどだと思うのですが、PCMからmp3に変換した場合と、DSDをmp3に変換した場合とでは、圧倒的にDSDからの場合の方が元のエネルギーというか、気配のようなものが残っていると思います。
オーディオ・フォーマット変換ソフトウェアの「AudioGate」も音が好きなので、DSDからPCM、PCMからmp3などほとんどすべての変換に使用しています。