チューナーの使い方 第6回:純正律とプロフェッショナルの現場編

チューナーの使い方 - チューニングしてますか? 第6回:純正律とプロフェッショナルの現場編 文・写真/河野朝子   動画/コルグ

純正調ってなに? チューナーに合わせて弾いちゃダメなの?

「超初心者で始めた楽器ですが、チューナーのおかげでドからシまでかなりバッチリ音が合うようになってきました。そこで意を決して市民オーケストラに参加してみたところ、楽団の方から真っ先に、あなたは音程が違う、それでは響かない、ミはもっと低めに、と注意されました。「チューナーのメーターには合っていますけど….」と言ったら、チューナーは平均律、合奏は純正律、と笑われてしまいまいました。合奏だとチューナーって役に立たないんでしょうか。純正律って結局なんですか?」(チューナーを使った純正律の音程のとり方は次のページで説明します)

純正律とは純正調とも呼ばれる音階のとり方のひとつの種類です。

純正律は和音の響きの心地よさを追求した音程のとり方で、オーケストラや吹奏楽など、世界中の合奏で使われています。

「ピアノが平均律だ、というのは聞いたことがあるのですが、その平均律と純正律の違いというものもよくわかりません」

純正律は、和音が響くことを目指して作られた音律ですから、例えばハ長調なら「ドミソ」「ソシレ」「ファラド」などの和音が美しく響くように作られています。ただハ長調用の純正律で揃えられた音律そのままで、他の調の曲を演奏することはできません。

バイオリンなどの擦弦楽器や管楽器のように自分で音程を調整できる楽器は、調が変わるたびに演奏者自身によって音律を変えることができますが、ピアノのように鍵盤ひとつひとつに音が割り当てられていてあらかじめ調律してある楽器では、一旦純正律で調律してしまうと様々な調の楽曲に対応できないことになります。

そこで発明されたのが「平均律」です。平均律(12平均律)は1オクターブ(ドからド)を12の音階でキッチリ割った音のとり方で、どんな調でも瞬時に対応でき、また、曲の途中に転調があっても音の関係が変わることはありません。

しかし、数学的に1オクターブを12で割っているため、和音の響きを犠牲にすることになってしまっています。ピアノだとその音色ゆえ音の響きの不自然さをあまり感じませんが、これが管楽器やバイオリンなどの擦弦楽器となると不自然さが際立ってきます(人間の合唱でも同じようなことが言えるでしょう)。

音は空気の振動が波のように空気中を伝わり、それが人の耳に達し脳で「音」として認識されます。

純正律は和音を構成する各音の「波」の数がそれぞれ単純な整数の倍数となることで「よく響く和音」を作ることができる音律です。

ドの波の数を1とすると1オクターブ上のドはちょうど2倍、2オクターブ上は4倍となります。人間がオクターブをオクターブとして聴き取れるのは、元の波の数の2の乗数倍(2倍、4倍、8倍、16倍……)になっているときです(1/2倍、1/4倍、1/16倍も同様)。人間の聴覚って意外とすごいものなんですね。

また、純正律ではソはドの3/2倍、ミはドの5/4倍とドに対して単純な整数比になっていて、波が同調しやすくなっているのでとても響きやすくなっています。よく見るとソはミの6/5倍になっていますね。純正律で奏でられた「ドミソ」はこうして大変響きやすくなっています。

 
 
純正律の波の数の代表的な例
 
 
 
 
 
 
根音が「I」、3度が「III」、5度が「V」となっています。ハ長調に置き換えると「I」=ド、「III」=ミ、「V」=ソとなります。
 

平均律の半音のひとつひとつ間はすべて「100セント」という単位で表され、ドと♯ドの間、♯ドとレの間……これらはすべて100セントずつになっていますが、これと純正律を比べてみると音によってはビックリするほど差があるのが分かるでしょう。


平均律と純正律の差の代表的な例(単位:セント)
音階 ♭III III 1オクターブ上のI
平均律 0.00 300.00 400.00 700.00 1200.00
純正律 0.00 315.64 386.31 701.96 1200.00
0.00 +15.64 -13.69 +1.96 0.00
根音が「I」、3度が「III」、5度が「V」となっています。ハ長調に置き換えると「I」=ド、「III」=ミ、「V」=ソとなります。


チューナーはどんな楽器のどんな音程にも対応するため通常は平均律表記が基本となっています。

ところが、オーケストラや吹奏楽などの合奏では和音の響きが重視されるため、音程をコントロールして演奏できる楽器、つまり、バイオリンなどの擦弦楽器や管楽器では意識的にチューナーのメーターの真ん中から音程をずらしたほうが響く和音を作れることもあるのです。

人間の耳には2〜3セントくらいの差であればほとんど感じられないとされていますが、さすがに10セントを超えると響きの感覚に違いが生じてきます。特に和音で頻繁に使われる長3度(ドに対してミ)と短3度(ドに対して♭ミ)の差は10セントを超えているため重要です。よく響く和音を形成するにはまずこれらの音をとれるように訓練していく必要があります。






 
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