デュラン・デュランは80年代のエレクトリック・ポップ・シーンでの華麗なる活躍が印象に残るが、今回発売された『レッド・カーペット・マサカー〜美しき深紅〜』では、ノリ良く踊れるヒット曲と巧みなソングライティングとを組み合わせた切れ味鋭い感性が表現されたものになっている。レコード売り上げ7000万枚以上、米ヒット・シングル18枚、英トップ30位内に30回、アリーナ・チケットはソールド・アウトという国際的な知名度を誇るデュラン・デュランは、同時代の他のバンドにはほとんど無縁な「長寿」を持続している。ベーシストのジョン・テイラーがその理由をこう説明してくれた。「継続は力なり、だね。ギターであれドラムであれ、『もうやーめた』とおしまいにするグループや個人を見て来たし、バンド・メンバー間の摩擦を放っておく人も多い。僕たちは、ただ前進あるのみ、と思ってる。自分たちのやっていることが好きだし、情熱も持っているし、今でもそれができることを光栄に思うよ。」
しかし、90年代に、バンドと同名アルバム(『デュラン・デュラン』)をもう1枚出して、記録的な売り上げと人気を得ながらも、メンバーの交代や解散の憂き目にも会っている。ジョンによると、「僕もバンドをしばらく離れて、他の人たちと音楽作りをしようとしたんだ。その経験からわかったのは、このバンドのメンバーには、相性というか、あうんの呼吸があるってこと。そりゃあ僕たちは世界の一流中の一流でないかもしれないけど、特別な『和』みたいなものがあって、うまくいっているんだ。」
2008年が明け、デュラン・デュランは結成30周年を迎えるだけでなく、バンドにとって次の時代が始まろうとしている。というのは、ティンバランド、ネイト“danger”ヒルズという最強、敏腕のプロダクション・チームと、長年のデュラン・デュランのファンのジャスティン・ティンバーレイクとのコラボで、『レッド・カーペット・マサカー〜美しき深紅〜』を制作したからだ。その体験をジョンはこう語ってくれた。「緊迫と集中の一言だよ。ティンバーレイクはニューヨークでのセッションの初日に参加して、そのあと5日間はティンバランドとネイトとコラボした。流れに乗れた感じがしたね。それからネイトがロンドンに来て僕たちとかなりの曲をプロデュースした。ネイトがニューヨークでのセッションの続きを再開して、バンドの空気感をつかんでくれた。それから一番最後にジャスティンと1曲録った。一緒に仕事すると、ほんとに面白い連中だよ。僕自身、バンドに戻って以来、いろんなプロデューサーと仕事したけど、これほどのお手並みを見せてくれる人達はいなかったね。おまけに、いろんなインスピレーションをもらったし。ツボを得て背中を後押ししてくれるんだ。」その結果出来上がったのが、パワフルでクラブなどですぐ使える「ナイト・ランナー」などの曲だ。これは、変わりゆく時代の波にうまく乗っていくことができる、デュラン・デュランの多様性と能力を物語っている。
ジョンが、このプロダクション・チームとのコラボを始めてすぐに気がついたのは、自分がキーボードでベース・ラインを弾くことになるだろう、ということだった。「普通のベースではこんな芸当はまず無理だったね。それで新しい手段を模索したんだ。」ジョンの素晴らしいシンセ・ベース・サウンドは、コルグのRADIASシンセサイザー/ボコーダーのおかげだ。従来のアナログの直感的な操作と、モダンな音色、使い易さ、機能の組み合わせが気に入っているという。「使う目的を十分以上に果たせる機能が詰まってる。まだ基本的な機能しか使ってないけどね。ツアーに出るまではRADIASを使わなかったけど、ティンバランドとネイトとのスタジオ・セッションでやった内容すべてに対応できているよ。」
ジョンがRADIASをデュラン・デュランのキーボード・プレイヤー、ニック・ローズに見せたところ、ニックは驚いて目を見開いた。こうして、いわゆる「エレクトロ・セット」が誕生したのである。このセットは、ツアーでバンド・メンバー全員がシンセを弾く、ヒット曲のコレクションだ。「このごろではいろんなバンドがアコースティック・バージョンとかアンプラグド・バージョンをやるね、っていう話になって。それが業界のスタンダードになってきたし、僕たちもやってみたけど、いまいちしっくりこなかったんだ。だって、もともと僕たちはそういうバンドじゃないから。僕たちがルーツに戻るということは、シンセとか初期のシーケンサーとか、そういったものを使うことなんだよね。それで、アコギでプレイする代わりに、エレクトロ・セットにしたら、ということになったんだ。」
RADIASだけでなく、ステージ上のセット・アップとして、M3ミュージック・ワークステーション/サンプラーと、microKORGシンセサイザー/ボコーダーが加わった。この3台をまだまだ使い足りなくて、今後のレコーディングでも使うのを楽しみにしているという。ジョンによれば、「エレクトロ・セットでは基本的に、バンド・メンバー全員がキーボードを弾いているわけだから、学習というか、慣れるのに時間がかかった。僕はすでにかなり使い込んでいたから、自分にとってはいいチャンスだと思ったよ。だって、新しいアルバムの曲を演奏する時はキーボードをかなり弾くことになるからね。サイモン・ル・ボンに、『このあたりでキーボード弾いたらどう?』とすすめてみたら、彼も意欲満々でね。microKORGのボコーダーと取り組み始めた途端、駄菓子屋さんに入った子供みたいで!サイモンもロジャー・テイラーも僕も、確かにこれまでとは違ったテクノロジーを相手にしているわけで、それがすごく面白いし楽しいんだ。」
photo by ステファニー・ピステル