2006年リリースのファースト・アルバム「Satisfaction」で一躍脚光を浴びて以降、独創的なクリエイティブ・ワークでインストゥルメンタル音楽シーンに大きな存在感を示し続けるINO hidefumi。シンセサイザーを始め電子楽器を巧みに操りつつ、古いフェンダー・ローズとアコースティック・ピアノをこよなく愛する氏にとって、最新のミュージック・ワークステーションKRONOSは果たしてどの様に映ったのか。現在の音楽感やこれからの活動などと併せて、お話を伺った。
KRONOS、そしてコルグのシンセについて。
何からお聞きしましょうか…そう言えばですね、遂にKRONOSのカタログが刷り上がりました(笑)。
何だか面白いですね、絵が立体的と言うか。高級感がありますね。
ありがとうございます。そのKRONOSなんですが、件の震災の影響があったりして発売が遅れまして、発表から発売まで3カ月以上を経過していたこともあって話題性などを心配していたんですが、お陰さまで皆さんとても高い期待感で待っていてくれました。
僕もコルグさんの本社へ発表会前のプレゼンでお伺いした際のことをTwitter上で書いたところ、その反響は凄かったですね。どうなんですか?どんなシンセなんですか?みたいな。もちろんそれは言えません、秘密ですとしておきましたけど(笑)。OASYS以来になりますか、M1とかまで遡ってみても常にコルグさんの製品には関心を持ってましたし、今回のKRONOSもとても楽しみにしていました。
KRONOSに触れての第一印象や、何か感じるところなどありましたか?
まず音に品格があるところでしょうか。そして高音質であるところが第一印象としてありました。解像度とかリアルさとかを楽器として深く追求しているなと感じました。当然ピアノ、エレピ、弦、ドラムなど色んな音が入ってますけど、自分でも更に深く音を追求してみたくなりました。KRONOSが家に届いた日には夜遅くまで触ってましたね(笑)。
INOさんは元々クラシック・ピアノから音楽を始められ、今ではフェンダー・ローズが代名詞となっているのはINOさんのファンなら誰もが知るところですが、ずっと生の楽器に触れて来られた訳ですよね。また一方でシンセサイザーなど電子楽器を採り入れたプレイもとても大きな魅力だと思います。そういうプレイヤーの耳からしても、これまでのシンセとの違いはどんなところだと思われますか?
そうですね。シンセに内蔵してあるピアノの音やエレピの音にこれまで説得力を感じたことはなかったんですが、KRONOSはそこが決定的に違う、もの凄い説得力がある。恐らく瞳を閉じて本物とKRONOSを弾き比べても、どちらがどちらか分かる人はいないと思います。大差無いと言うのではなく同一線上に並んでいると思います。あとエレピのキャビネットやスイッチなどをヴィジュアル化してるタッチ・パネルにしても使い易い。触っていて楽しいし飽きないですね。
イマジネーションが湧く楽器?
湧きますね。本当はこれはグラフィックに誤魔化されてるんじゃないかと思って、これだけリアルに再現してるのは視覚的に脳が騙されて音色が良く聞こえてるんじゃないかと思って、一度KRONOSを見ないで弾いたりもしました(笑)。でもやっぱりそう言うことではありませんでした。開発の方にはどれだけ深く突っ込んだ研究をしたのか聞いてみたいですね。
なるほど。でも逆に言うとそうやって騙すこともできるんですね(笑)。
…そうですね(笑) 視覚から訴えて脳を騙すのはできると思いますよ。相対的に感じるものだからそれはあると思います。でもKRONOSは音だけで何度も確認して、これは違うな、本物だなと思いました。
シンセの生音と言うと、例えば今日はローズ持って行けないからシンセで間に合わせるかみたいな、何か代用品みたいな使い方をされることがあるんですけど、そうではなくて一つの楽器として向き合えると。
そうですね、僕はそう思います。まずはレコーディングで使ってみようと思ってます。ライブではもちろん生のフェンダー・ローズは使い続けますけど、ライブでの適応性とかを考えたら場所によっては使い分けてもいいのかなと思ってます。あと、まだ取扱説明書を見てないんですよ。僕は機材が届いたら、先ずは取説見ないでどこまで行けるかやってみるんですけど、今のところまだ見ないで行けてますね(笑)。シンプルな作りだし、タッチ・パネルにしても一連の操作が感覚的に分かり易い。ユーザーにとっては凄くありがたいことです。
シンセに関わらずですが、楽器なので直感的に分かり易と言うのはとても重要ですよね。我々にも反省の念が多々あるのですが(笑)…シンセ然り、エフェクター然り、中身がデジタル化され多機能化が進んだ今の楽器は凄いことができるんですが、問題はそのインターフェースがプレイヤーにとってどれだけ使い心地がいいか。そう言う意味では原点回帰と言いましょうか、KRONOSもアナログ・ライクな操作性を備えてます。
僕は昔のアナログ・シンセMS-20を持ってて使ってるんですが、KRONOSのタッチ・パネルで操作するMS-20もツマミだったりパッチングとかもしっかりしてるので、そう言うところでも自ずと親近感が湧いてきますよね。
M1から始まったミュージック・ワークステーション構想の集大成と言いますか、それがこのKRONOSで一つの完成形になったのでは、と思います。
音色とかの追加はできるんですか?
ソフトウェアで追加できるようになってます。既にこれだけの音色が入っていますが、先々を見据えてブラッシュ・アップして行く必要は感じています。
確か70年代でしたか、コルグさんに凵iデルタ)、Λ(ラムダ)、煤iシグマ)ってシンセがあったじゃないですか。あれが欲しくて探してるんですがなかなか見つからないんです(笑)。凾フストリングスとか抜けも良くて凄く素敵な音がするんですよね。
PolysixとかMS-20とか、メジャーなシンセの路線ではなくて?
そうですね、王道のシンセ・サウンドはみんな使っているし世の中に溢れてますからね…コルグさんにとってはチープでマイナーな存在かもしれませんし世界中でも知ってる方は少ないと思いますが、当時日本で作られていたシンセの再評価にも繋がるかもしれません。流行ると思うんですけどねぇ…今日はそれをコルグさんに伝えたくて来ました(笑)。
しっかり伝えておきます(笑)。しかし今聞くとリアル志向とは対極にあるチープだったり少し遊び心を持った音だったり玩具みたいな音って、INOさんもそうですけど多分ミュージシャンって好きですよね(笑)。KRONOS自体がアーカイブ装置でもあるので実現したら面白そうですね。
是非宜しくお願いします。